about us

身の回りにあるどんなものでも, 生活の中には必ずデザインされたものがあります。
もしくはそう謳われていない「何でもない」ものや,
どのような経緯で作られたのか分からないようなものまで,
全て意匠化(デザイン)を経て形にされています。

amplogはそのような普遍的なデザインに対して
“編集(Edit)”“意匠(Design)”“構成(Compose)”を施すことで,
身の回りにある価値を別の価値として置き換えながら,
多義的な検証を展開していくウェブコンテンツです。

あまり耳慣れない専門的なサブジェクト, 既に知り尽くされたアイデアやコンセプト,
それらをamplogの視点で再構築し,
ジャンルやカテゴリーにとらわれない創造的なコンテンツを展開していきます。

Design

02 | Revival of a classic typeface

古典書体のリバイバル
オリジナル活字の解釈について

January 28, 2015

書体デザインの歴史はその模刻や改刻の連続にあり,時代の転換や発展する技術環境と社会の要望に対しての解釈によって, 多種多様な活字書体が生まれてきました。そこから書体は「オールド・ローマン」や「トラディショナル・ローマン」など時代ごとに順序立てられ, また「ヒューマニスト」や「ギャラルド」など書体のスタイルごとに分類されていきますが, これらの分類法は最初から確立されていたわけではなく, またそれに従って書体が設計されてきたわけでもありません。

そもそもデザインは何も無いところからは生まれません。デザインという単語は「(~の)意匠・設計(を行う)」と定義されています。つまりデザインとは〈目的〉のために〈意匠〉を行うということになります。

書体デザインの目的は第一に機能性に向けられます。なぜなら, 文字そのものには書体という意匠は施されてはいないからです。文字は,リテラシーが生んだ書くというテクノロジーのコードであり, 記号システムに写した情報です。そしてこの情報を望んだ形で届けるためにタイポグラフィ(またはグラフィックデザイン)で文字を適切な書体に変換するのですが, 書体のもつ機能によって,変換されたコードは万華鏡のごとくその印象を変化させます。その機能が書体のスタイルと呼ばれるものです。

このように, 書体においてスタイルとはまず機能性であり, 機能がスタイルとなってその書体の特性となっていきます。書体のデザインとはまさしく, 機能に意匠を施したときに決定するのです。

ゴーティエをデザインするときに, まず書体の機能をどのように設定するかを検討しました。この段階で具体的な形やスタイルはイメージしていません。重要なのは書体の機能を分析するにあたって, タイポグラフィの定義を把握することです。これは一概に制定してあるものではないため, 様々な方の論説を参考にしました。特にスタンリー・モリスン, ヘルムート・シュミット,ギュンター・ランゲ, ビアトリス・ウォードなどの論説や, 多数の出版物で知られているヤン・チヒョルトとアドリアン・フルティガー両氏の著作や作品解説, また書体のデザイン面からエリック・ギル, オトル・アイヒャー両氏の評伝など, いずれも著名な方々の記述がほとんどです。

これらの論説からはタイポグラフィに関する重要な定義がいくつもあり,その中から活字書体に関連する部分を抽象化していくと,活字書体に重要視される機能は,時代と社会に適合したものであり, 実用的であり, 汎用的(没個性的)であるということでした。この部分をもとにゴーティエの書体デザインのアウトラインを描いていきます。

まず汎用的であるという特徴から, 数多くリバイバルされているギャラモン書体を参照にデザインを進めました。これは16世紀フランスの活字彫刻師クロード・ギャラモンの彫った活字が, 模刻や復刻によって様々なバージョンとして制作され, 今日では「ギャラルド」というカテゴリーに分類されている書体です。印刷博物館などが所蔵している数多くの書体見本帳が, 製作に携わった人々の多さを表しています。
ですがここで重要なのは, オリジナルがどの書体であるかということではなく, ギャラモンの書体には大量に模刻されるほど汎用的な魅力が備わっているということです。もちろん時代の文化的な背景によって確立されていったという事情もありますが,その優れたタイプデザインによる普遍性は現在でも受け継がれ続けています。
(また「ゴーティエ」という書体名は, ギャラモンが自ら出版業を始めた際に協力したとされる人物 Pierre Gaultier から取っています。)

次に実用的であるという側面については,タイポグラフィとグラフィックデザインの視点から捉えていきました。これは汎用性にも当てはまりますが,多様なテキストを一つの紙面, 一つの本にまとめようとするとき,使用する書体にどのような構造があったとしても, その書体一つで内容を十分に補うことは,とても難しいということです。書体のウェイト違いによるファミリー展開においても同じことが言えます。原文が多様な表現を用いる場合, それを再現するための活字書体も, 多様でなくてはなりません。
そこからゴーティエを実用的にするために, セリフ体のギャラルドをベースにしつつも,セリフのないサンセリフ体の書体としてデザインを仕上げることにしました。これによりサンセリフ書体にはない有機的な表情をもつことになるので, 判読性に期待がもてます。またセリフ体のギャラルドを主要書体として使用したときに, ゴーティエをキャプションや注釈など小さいテキストで使用することで, 可読性を損なうことなく紙面に統一感が与えられます。

このようにしてゴーティエの書体デザインは進められていきましたが, 現代的な創造性に合う書体であうかどうかは, 伝達する内容とそれをまとめるデザインによってはじめて効果が分かるものです。この書体にその可能性が示されていると期待します。