about us

身の回りにあるどんなものでも, 生活の中には必ずデザインされたものがあります。
もしくはそう謳われていない「何でもない」ものや,
どのような経緯で作られたのか分からないようなものまで,
全て意匠化(デザイン)を経て形にされています。

amplogはそのような普遍的なデザインに対して
“編集(Edit)”“意匠(Design)”“構成(Compose)”を施すことで,
身の回りにある価値を別の価値として置き換えながら,
多義的な検証を展開していくウェブコンテンツです。

あまり耳慣れない専門的なサブジェクト, 既に知り尽くされたアイデアやコンセプト,
それらをamplogの視点で再構築し,
ジャンルやカテゴリーにとらわれない創造的なコンテンツを展開していきます。

Design

11 | Die Verwandlung

文字と文学への偏愛 
ブックエンドに変身した本

July 20, 2016

先日ポスターの制作を頼まれた「ブックエンド展」ですが、実はこっそり展示の方にも参加させて頂くことになりました。概要はもちろん把握していたものの、さて実際ブックエンドを作るとなるとどうしたものか。立体物の制作となると発想に加えて技術の問題も大きく、思うようにアウトプット出来るかどうかが悩みどころです。

ブックエンドはもともと本を支えるという機能の他に、本をインテリアとして見せる(見えるようにする)側面もあります。印象的なブックエンドは、その本棚の魅力を異なるベクトルで表現し、煩雑になりがちな様々な背表紙を一つのオブジェとしてまとめる事もあります。もしくは1つのアイデンティティとして、個々の感性を反映させるプロダクトとして飾られている場合もあります。どのような形にせよ、まずは作り手と本との関係性から生み出されるものであることは間違いないので、今回はその辺りからコンセプトを探っていきました。

とは言いつつもアイデアは定着し難くく、デザインを通して本を“本以外のもの”で表現するというのは、ちょっとしたナゾナゾのような趣のあるものでした。その時ちょうど別の案件で考えていた文字組版の事が頭を過り、シンプルにタイポグラフィで何かコンセプトを表現できたらよいのではないか、という発想が浮かびました。またちょうどその頃、ブックエンドの相談で双子のライオン堂の店長さんに話をしていた時に、「展示会なので、ある意味「概念」としてのブックエンドでいいんですよ」と諭されて、イメージがだんだんと形を帯びてきました。

とにかくシンプルで、コンセプトが分かりやすく、説明し過ぎずに伝わるもの。機能性は(技術不足もあり…)ある程度考慮せず、まずは明確に本に対する偏愛を伝えられるビジュアルを据えることが大事だと思いました。

本に対する造形はもちろんですが、その偏愛を伝えられるモチーフは間違いなく「文字」にありました。文学、評論、ノンフィクション…テキストは無数ですが、文字という本を構成する最小単位はたったひとつの概念です。今回のブックエンドで表現したかったテーマを文字に据えた時、今までにやっていない「文字」を使った表現が出来ないか、オリジナルの書体や見本帳の制作などの本流的なアプローチ以外で試せる、実験的なアイデアがないか。そういった「異なる角度からの探求」という視点それ自体を形にして、文字に対する偏愛を表現したのが、このアクリルの碑文が重なったブックエンドです。

ある部分では重なりあって文字とは判別できない状態になり、ある部分では立体的に存在しているかのようなレイヤー感を生み出し、眺める視点によって様々ですが、文字自体は紙に印刷されているような2次元の状態です。ただそれでも、本を構成している文字の概念について、少しでも異なったベクトルの可能性を、このブックエンドで表現できた気がしています。ちなみに本のテキストで使用した作品はタイトルにあるようにフランツ・カフカの「変身」です。ある朝、本がアクリル状に隔てられていたら、いったいどう思うのでしょうか。気になりますね。